横丁「食」コラム 〜 あじの干物 〜


「あじの干物」は、日本の食卓を飾る代表的な魚のおかず。
安くて美味しくて飽きのこない、庶民の味方です。
家庭での朝食・夕食はもちろん、大衆食堂の定食、旅館の食事メニュー、
ホテルの朝食バイキングなど、日本のあらゆる「食」の場面に深く浸透しています。

「あじ」は刺身で食べても美味しいですが、干物の味の濃厚さは別格です。
天日に当てて乾燥させることで旨みのもとであるアミノ酸が増幅されて、
美味しくなります。

その中でも「背骨にへばりついた身」は、最も多くアミノ酸を含んでおり、
はがして食べるとこたえられない美味しさです。
干物は、もともとは保存食でしたが、冷凍技術の発達した今はそうした色合いは
薄れています。
昔ほど塩をきかせていないので、常温では二日と持ちません。



食卓にのぼる「あじ」の代表格は、「真あじ」「ムロあじ」ですが、
「真あじ」のほうがよくとれるのに高価です(漁獲される「あじ」の90%を占めます)。
個人的には「ムロあじ」も捨てがたいものがあります(脂ののりはよくないのですが、
納豆によく合うので)。
「あじ」は種類が豊富で、刺身に最適の「しまあじ」、干物になる「青あじ(まるアジとも
呼ばれ、真あじより高価)」は有名なところです。
その他にも糸引あじ、めあじなど20種類ほど存在が確認されています。


干物の作り方は意外とシンプル。
あじを開いて、適度な濃さに調節された塩水につけて、
水で洗った後に天日で乾かす・・・基本はこれだけです。
一般家庭でも作れます。
しかし、全国規模で売れている人気干物は、塩の選定や乾かす時間、
気温、湿度にまで並々ならぬ気配りがなされており、
簡単に真似できるものではありません。


また、干物の生産者は、それぞれ独自の「塩汁(しょっちる)」を持っており、
これが最大の秘訣となっています。
「塩汁」は扱いが難しく、濃度や漬け込む時間によっては、
臭みばかりがたってしまいます。
「熱して臭みを飛ばす」「コクが出てかつ臭みのたたないぎりぎりの漬け時間を
見極める」など、生産者は様々な工夫を凝らしているのです。



「あじ」は20%ほどが輸入されていて、オランダ、アイルランド、ノルウェー、韓国
といった国が主要な取引先となっています。
日本での漁獲量は、ここ数年、かなりの減少傾向にありますが、輸入動向に大きな
変化はありません。


一方、干物に使われる「あじ」の比率は、国産:外国産=3:7で、輸入比率とは
逆の数字が出ています。
理由は、日本近海で獲れる「あじ」の多くが鮮魚として扱われているためです。
「あじのたたき」や「刺身」に使われるのは国産物が多いということです。


国産と外国産を見分けたい場合は、「大きさ・形」に注目しましょう。
外国産は「大きく長細い」。
一方、国産は「(外国産に比べて)小ぶりで丸っこい」です。
ただ、外国産でも、イギリスやポーランド周辺で獲れたものは
身が小さいものが多いようなので、難しいところですが。


「あじの干物」の生産高は、静岡県沼津市がトップ。
富士山の雪解け水である「柿田川湧水」を使える地理的特権があり、
独自の「塩汁」開発も怠らないため、他の追随を許しません。


学生時代、近くに住んでいたこともあって沼津には何度も足を運びました。
港周辺のみならず、近くの住宅街にまで強烈な臭いが漂っていたのが
印象に残っています。
最初は「臭いな〜」と思いましたが、慣れると、いいものです。
西伊豆の玄関口で、周辺には観光スポットも多いので、ぜひ足を運んでみてください。


静岡県沼津市役所ホームページ



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