横丁「食」コラム 〜 ブイヤベース 〜


様々な魚介類のごった煮。
それが、ここで紹介する「ブイヤベース」です。

フランスの港町「マルセイユ」で生み出されたスープで、
「黄金のスープ」と呼ばれることもあります。
また、世界3大スープの一つともされています。
ちなみに、残りの二つは、中華料理の「ふかひれスープ」
そして、東南アジア一帯で食される、辛〜いスープで知られた「トムヤムクン」です。



「ブイヤベース」の原点は、漁師が大鍋に「売れそうもない小魚」
放り込んで煮込んだものにあります。
そう、世界3大スープと書いたものの、要は「魚のごった煮」なので作り方は簡単です。


しかし、マルセイユには「ブイヤベース憲章」なるものがあります。
ゆえに、昔ながらの本物の「ブイヤベース」を再現するのはなかなか大変です。
ただの魚のごった煮を、レストランに出す料理に昇華させるには、
それなりの苦労があるのです。


フランスでは、この憲章にのっとった「ブイヤベース」を出してくれる店に行けば、
まずハズレはないそうです(加盟制をとっているとのことなので、
現地に詳しい人に聞けば、加盟店はすぐに分かるでしょう)。



「ブイヤベース憲章」の内容は、概ね以下のとおり。

「食べる魚」は、地中海の岩礁に住むものに限定され、
海老や貝類は入れてはいけません。

また、最低4種類以上の魚を入れることとされています。
主に、アナゴ、ホウボウ、カサゴ、マトウダイ、タラなどが入ります。

「スープの出汁」は小魚でとりますが、この小魚の種類も決められています。

「ブイヤベース」の言葉の意味は、「ぐつぐつ煮て、(火を)消す」。
その言葉どおり、短時間で仕上げるのが至上命題です。



日本では、ハマグリ・ムール貝などの貝類や、伊勢エビなどを入れたものを
「ブイヤベース」と称して出す店がほとんどですが、憲章では「魚類」以外は
入れてはならないので、本来的にはブイヤベースとは違います。


しかし、日本人は、魚を食べるのに慣れています。
魚料理も無数にあります。
「魚のごった煮スープ」のようなものは、鍋物としていくらでも食べられますので、
魚だけではありがたみがなく、売り物としてはいまいち。
だから、貝類・エビなどを入れて豪華さを演出しようとしていると考えられます。


では、本場フランスではどうかというと、あちらも似たような傾向にあるようです。
憲章にのっとったブイヤベースを出す店は、むしろ少数派。
やはり貝類・エビなどが入ることが多いようです。
フランスを含めて、ヨーロッパは典型的な肉食文化。
魚だけでは、あまりうけがよくないのでしょう。



以上をまとめてみると、憲章にのっとった魚オンリーのブイヤベースは・・・

「日本では、無数の魚料理があり、人気が出ない・・・」
「フランスでは、魚料理が主食とはいえないため、魚だけでは人気が出ない・・・」

理由は対極ですが、世界を代表するスープも厳しい立場に追い込まれています。



余談・・・

管理人が東京で食べたブイヤベースは、やはり貝類が入っていて、
ブイヤベース憲章のものとは違いました。(エビやイカは入っていませんでしたが)
管理人が調べた範囲では、東京で「憲章ブイヤベース」を食べられる店はありません。


食べたときは、スープというより鍋物に近い感じがしましたね。
ただ、「汁」は複雑な味がしており、日本の鍋物の味とはまるで違いました。
このあたりに人気の秘密があるかと思います。


後で調べたところ、魚の出汁、各種野菜、トマト、ニンニク、オリーブなどが
味の基本になっているとのこと。
日本の鍋料理ではちょっと味わえないでしょう。


値段も張りますが、試してみる価値はあると思います。



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