横丁「食」コラム 〜 餃子 〜


日本で「餃子」といえば、ラーメン屋で出てくる「焼餃子」でしょう。
本場中国では「水餃子」「蒸し餃子」が中心ですが、
日本では、やはり「焼餃子」に目が向いてしまいます。
「焼餃子」は、中国では「鍋貼(なべはり)」と呼ばれますが、
もう「日本式餃子」とでも言ったほうがいいのかもしれません。



「餃子」が日本に広まったのは、第二次世界大戦後のこと。
戦争中に多くの日本人が中国(東北部・満州)に渡り、
戦後、帰国した方たちの中から「餃子」を売りに出す人が現れたのがきっかけです。
しかし、中国ではあまり一般的ではない「焼餃子」をどうして選んだのでしょうか?


理由は色々考えられますが、最も大きな理由は「餃子の皮」にあります。
「水餃子」「蒸し餃子」を作るには、
かなり「質の高い皮」を「厚く」使わなければなりません。
また、「焼餃子」に比べると、作るのに時間も手間もかかります。


戦後の復興期、貧しかった日本人のお腹を満たすには、
「薄い皮」で大量に、しかも素早く作れる「焼餃子」のほうが都合がよかったのです。
もちろん、戦後、「屋台」から出発した方たちが多いのも一因です。
焼餃子のほうが場所をとらないので、狭い屋台でも作りやすいですから。


そして、日本が豊かになる頃には、もう「焼餃子」が日本中に広まっていました。
栃木県・宇都宮市は、「餃子の街」として有名ですが、やはりメインは「焼餃子」です。


なお、宇都宮に餃子が定着した理由は、先述した「満州からの帰還兵が広めた」
「満州と気候が似ていて、材料の栽培・入手が容易だった」といった説があります。
しかし、他の都市でもこうした状況・条件はあったでしょうから、
こればかりは何かの縁と言うしかないでしょうね。


なお、宇都宮が「餃子の街」として有名になったのは、1990年代から。
市と観光協会による「餃子マップ」の作成、各種イベントの実施、
「餃子の皮をまとったビーナス」の餃子像をJR宇都宮駅前に設置する・・・
などのPRが実を結んだものです。

現在では、東京・池袋・サンシャインシティ内にある「ナムコ・ナンジャタウン」にも
数店舗が出店しており、ますます盛況です。
宇都宮の町自体は、駅周辺の大規模デパートが撤退するなどして、非常に苦しい
状況にあるようですが・・・。


宇都宮市ホームページ
宇都宮餃子会
(餃子マップなどがあり便利です)



餃子の皮の原材料である「小麦粉」の話も少し。

小麦粉はパンを主食とするヨーロッパが原産地
どのようなルートで極東まで伝わったかというと、かの有名な「シルクロード」を通って、
中近東→中央アジア→中国をはじめとする東・極東アジア・・・
というルートで広まったとする説が有力です。

簡単に分類すると、

天ぷらやケーキに使われる「薄力粉」
うどん、フランスパンなどに使われる「中力粉」
パンや中華麺に使われる「強力粉」
パスタに使われる「デュラム小麦(中力粉に近いが、生物学的には別のもの)」

といった感じになります。



餃子の話題に戻ります。

今では、中華料理店に行けば「水餃子」も「蒸し餃子」も
手軽に美味しいものが食べられます。
でも、日本人なら、「焼餃子」に魅力を感じる方のほうが多いと思います。

黄昏時や深夜、横丁のラーメン屋で出てくる「焼餃子」を
ラーメン(あるいはチャーハン)と一緒に頬張るのは、日本人の特権でしょう。
油を使うから適度な満腹感も得られますし。


また、日本の餃子には「ニンニク」がよく使われますが、
これも戦後の日本の状況が深く関係しています。


終戦直後、日本で最も安く手に入る肉は羊肉(マトン)でした。
マトンは、ご存知のとおり臭いがきついため、
その臭いを消すために使われたのが「ニンニク」というわけです。
しかし、豚肉など他の肉類が手に入りやすくなった今でも、
ニンニクはしっかりと使われています。
その味・香ばしさが日本人の心をつかんだのです。



ちなみに、中国では、餃子は新年を迎えるときに食べるものでもあります。
日本人にとっての「年越しそば」あるいは「お雑煮」のようなものと
考えればよいでしょうか。
中国人と餃子のつながりは、日本人とコメの関係と同様、
非常に深いものがあるようです。
機会があれば、こちらも、もっと詳しく調べてみたいと思います。



余談・・・

今まで色々な餃子を食べてきましたが、誰がなんといっても、
ラーメン屋で食べる「焼き餃子」が一番ですね。
熱々のラーメンと熱々の餃子・・・
想像しただけでよだれが・・・


この組み合わせを初めて体験したのは、
記憶が正しければ小学2年生の頃だったと思います。
「一園」というラーメンのチェーン店でした(現在も活況です)。
薄暗い店内で、親に「熱いから気をつけなさい」と言われながら食べていました
(こんなしょうもないことばかり、はっきり覚えているんだな)。


日本では、まだ新しい部類の食べ物ですが、
もう「中華風日本食」として、その地位を不動のものとしている感じですね。


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